「MSCIの指数に採用されたら株価が上がる」「除外されたら下がる」——そんな話を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。結論からお伝えすると、MSCI ACWI採用・除外の過去30銘柄を検証した結果、追加群も除外群も平均の超過リターンは小幅なプラスにとどまり、「追加=上昇、除外=下落」とは単純に言い切れませんでした。

この記事では、オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)が連動するMSCI ACWI指数で、実際に日本株の組入・除外が起きた過去30件のイベントについて、適用日から1ヶ月後までの株価データを1件ずつ検証しています。

この記事でわかること

  • MSCIの組入・除外が株価に与える影響を、過去30銘柄の実データで検証した結果
  • 「超過リターン」という指標の意味と、初心者にも分かる計算の考え方
  • 追加・除外それぞれの銘柄別の株価変動データ一覧(全30銘柄)
  • なぜ指数イベントだけで株価の方向性を予測しにくいのか
  • この検証データが参考になる人・ならない人、検証の限界

【結論】MSCI ACWIの組入・除外だけでは株価の方向は読めない

  • 追加された15銘柄の平均超過リターン:+1.9%(プラス8件・マイナス7件)
  • 除外された15銘柄の平均超過リターン:+1.6%(プラス8件・マイナス7件)
  • 個別の振れ幅は-14.5%〜+16.0%と大きいが、方向性はランダムに近い
  • 本記事は過去の事実の検証であり、将来の値動きを予測・推奨するものではありません

結論:MSCI組入・除外だけで株価の方向は読めない(30銘柄検証の結果)

まず、今回の検証で分かったことを先にまとめてお伝えします。詳しい検証方法や個別銘柄のデータは、この後の章で順番に紹介していきます。

追加群の平均超過リターンは+1.9%、除外群は+1.6%と小幅にとどまる

2013年から2026年までにMSCI ACWIへ追加・除外された日本株、合計30銘柄について、適用日から1ヶ月後までの株価変動を調べました。結果は次の表のとおりです。

グループ平均超過リターンプラス/マイナス
追加された15銘柄+1.9%8件 / 7件
除外された15銘柄+1.6%8件 / 7件

どちらの数値も、個別銘柄の値動き(-14.5%〜+16.0%)に比べればかなり小さく、しかも追加群・除外群でほぼ同じ水準になっています。仮に「追加=上昇、除外=下落」という効果が本当にあるなら、両者は逆方向に離れていくはずですが、実際にはむしろ同じような小幅プラスで並んでおり、指数イベントそのものの効果というより、検証期間中の市場全体の底堅さを反映している可能性があります。

プラスとマイナスの銘柄数も追加群・除外群ともに8勝7敗

平均値だけでなく、プラスになった銘柄とマイナスになった銘柄の数を数えても、追加群・除外群のどちらも8勝7敗とほぼ五分五分でした。個別に見ると-14.5%〜+16.0%までかなり大きく動いた銘柄もありますが、その方向がプラスとマイナスのどちらに転ぶかは読みにくい状態です。詳しい銘柄ごとのデータは、後述の一覧表でご確認ください。

検証方法:オルカンの日本株入替データを使い「超過リターン」で比較した

「超過リターン」とは何か──市場全体の値上がり分を差し引いた数値

この記事では株価の変動を2つの数値で比較しています。少しややこしく感じるかもしれませんが、順番に説明しますね。

1つ目は「適用日→1ヶ月後の変動率」です。これは、その銘柄自体の株価が、MSCIの組入・除外が実際に指数へ反映される日(適用日)から1ヶ月後までの間に、何%動いたかを示す単純な数値です。

2つ目は「超過リターン」です。これは、先ほどの単純な変動率から、同じ期間のTOPIX(東証株価指数、日本の市場全体の値動きを示す指数)の変動率を差し引いた値です。「市場全体の動きを取り除いた後に残る、その銘柄固有の値動き」を表しています。

具体例で説明します。レーザーテックは、2020年5月29日の適用日から1ヶ月後までの変動率が+14.8%でした。ただし、同じ期間(2020年5月末〜6月末)はTOPIX自体もやや下落しており、市場全体では-0.5%動いていました。そこで、+14.8%から市場全体の-0.5%を差し引くと、超過リターンは+15.3%になります。

なぜこの差し引き計算をするのかというと、「MSCIに追加されたから株価が上がった」のか、「たまたまその月は市場全体の調子が良かった(悪かった)だけ」なのかを区別するためです。単純な変動率だけを見てしまうと、市場全体が好調だった時期に組み入れられた銘柄は、実際以上に「MSCI効果で上がった」ように見えてしまいます。超過リターンを使うことで、この誤解をできるだけ減らして比較しています。

対象期間・銘柄選定基準(2013年〜2026年、流動性の高い単発イベント30件)

検証対象は、2013年〜2026年にかけてMSCI ACWIの定期見直し(年4回、2月・5月・8月・11月に実施)で日本株が追加・除外された事例の中から、以下の基準で30件(追加15件・除外15件)を選定しました。

  • 流動性が高く、株価データが安定して取得できる銘柄であること
  • 合併・株式分割・上場廃止といった他の要因が重ならない、単発の入替イベントであること(※良品計画のみ株式分割の影響を調整済みの数値を使用しています)
  • 適用日の株価と、その1ヶ月後の株価が両方確認できること

各銘柄について、適用日の株価と1ヶ月後の株価を比較して単純な変動率を算出し、さらに同期間のTOPIX連動型ETF(1306)の変動率を差し引いて超過リターンを算出しました。データはYahoo!ファイナンスの株価時系列と、MSCI公式発表資料(Global Standard Indexes)をもとにしています。

なお、オルカンに実際に組み入れられている日本企業の一覧や、過去の入替履歴の元データについては、以下の記事で詳しくまとめています。

あわせて読みたい

オルカンの日本企業一覧|業種別・入替履歴まとめ

今回の検証で使った銘柄入替の元データや、過去の除外理由・その後の株価推移を業種別に整理しています。

また、そもそもMSCI ACWIがどのような仕組みで銘柄を組入・除外しているのか、指数構造の基本を知りたい方は以下の記事もあわせてご覧ください。

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MSCI ACWIの仕組みとは|47カ国の指数を積み上げる構造を解説

なぜ定期的に銘柄が入れ替わるのか、MSCI ACWIが各国の個別指数を積み上げる構造から解説しています。

【追加15銘柄】適用日から1ヶ月後の株価変動と超過リターン一覧

MSCI ACWIに追加された日本株15銘柄について、適用日から1ヶ月後までの変動率と超過リターンをまとめました。

銘柄適用日変動率超過リターン
日本取引所G2013/2/28+23.5%+16.0%
レーザーテック2020/5/29+14.8%+15.3%
キオクシアHD2025/11/24+15.9%+14.9%
カプコン2020/11/30+13.9%+10.8%
フジクラ2024/11/25+11.5%+7.4%
ルネサス2017/8/31+10.6%+6.3%
日本ペイントHD2013/11/26+6.1%+2.5%
ダイフク2017/11/30+3.3%+2.0%
SCSK2020/5/29-0.6%-0.1%
SCREEN HD2024/2/29+3.1%-1.2%
かんぽ生命2019/11/26-2.8%-4.3%
ゼンショーHD2023/8/31-5.4%-6.1%
ディスコ2017/5/31-6.2%-9.2%
リクルートHD2014/11/25-11.3%-11.3%
良品計画※2025/8/26-11.8%-14.5%

※良品計画は株式分割の影響を調整した数値を使用しています。

大きくプラスだった日本取引所G・レーザーテック・キオクシアHDの共通点

今回の追加群で特に超過リターンが大きかったのは、日本取引所グループ、レーザーテック、キオクシアHDの3銘柄です。レーザーテックとキオクシアHDはどちらも半導体関連の追加で、適用日を含む期間が半導体セクター全体の相場が強かったタイミングと重なっていました。一方、日本取引所グループは2013年、日本株市場全体が大きな上昇局面(いわゆるアベノミクス相場)にあった時期の追加で、個別セクターというより市場全体の地合いの強さが色濃く反映されたとみられます。いずれのケースも、MSCIイベント固有の効果というより、その時々の相場環境の影響が大きかった可能性が高いといえます。

マイナスだった良品計画・リクルートHDに何が起きていたか

一方、超過リターンが大きくマイナスだった良品計画とリクルートHDについては、MSCIイベント固有の要因というより、その時期の個別株の値動きに左右された結果とみられます。決算内容や業績見通しなど、指数入替とは別の材料が株価に影響していた可能性があり、「追加されたのに下がった」という事実だけで指数イベントの効果を否定することも、逆に断定することもできません。

【除外15銘柄】適用日から1ヶ月後の株価変動と超過リターン一覧

続いて、MSCI ACWIから除外された日本株15銘柄の株価変動と超過リターンです。

銘柄適用日変動率超過リターン
GMOペイメントゲートウェイ2023/11/30+12.5%+12.8%
コスモス薬品2022/5/31+6.8%+8.8%
東京メトロ2026/2/27-3.2%+6.9%
東京センチュリー2022/5/31+4.1%+6.1%
ライオン2022/5/31+4.0%+6.0%
神戸物産2026/2/27-6.8%+3.3%
オムロン2025/8/26+4.2%+1.5%
ミスミグループ本社2024/5/31+2.0%+1.4%
小林製薬2023/11/30-0.4%-0.1%
サイバーエージェント2023/11/30-1.1%-0.8%
日本新薬2023/8/31-1.1%-1.8%
ウエルシアHD2023/11/30-4.6%-4.3%
サンドラッグ2021/5/27-3.4%-4.5%
パーソルHD2023/11/30-5.0%-4.7%
メルカリ2022/5/31-8.4%-6.4%

除外後もプラスだったGMOペイメントゲートウェイ・コスモス薬品・東京メトロ

興味深いのは、除外15銘柄のうち超過リターンがプラスだったのが8件あり、そのすべてが上の表の上位8行に集まっていることです。中でもGMOペイメントゲートウェイとコスモス薬品は、生の変動率自体が+6%を超える大きなプラスとなっており、除外されたにもかかわらず株価はむしろ上昇しました。東京メトロと神戸物産は生の変動率こそマイナスでしたが、同じ期間の市場全体がそれ以上に下落していたため、市場全体を差し引いた超過リターンはプラスに転じています。「除外=株価下落」という単純な図式が、必ずしも成り立たないことを示す実例といえます。

除外後にマイナスだったメルカリ・ウエルシアHD

一方で、メルカリとウエルシアHDは除外後の超過リターンもはっきりマイナスでした。ただし、これも指数から除外されたことそのものが原因なのか、その時期の個別の業績動向や市場環境が影響したのかを、この検証データだけから切り分けることはできません。除外群全体で見ると平均は+1.6%と個別銘柄の振れ幅に比べれば小さく、値動きにはかなりのばらつきがあります。

なぜ「追加=上昇、除外=下落」と単純にいかないのか

大きく動いた銘柄はセクター全体・市場全体の相場と重なっていた

今回の検証で振れ幅が大きかった銘柄の多くは、MSCIイベントが起きた時期にそのセクター全体、あるいは市場全体が強い(または弱い)地合いだったケースと重なっていました。半導体関連の追加銘柄が大きなプラスだった時期は、半導体セクター全体が活況だったタイミングとも一致しますし、2013年に追加された日本取引所グループの大幅プラスは、当時の市場全体の急騰局面と重なっていました。株価の動きが「MSCI効果」なのか「セクターや市場全体の地合い」なのかを、超過リターンの計算だけで完全に切り分けることは難しく、この点は検証の限界の一つでもあります。

MSCIイベント単体の影響は個別銘柄要因に埋もれやすい

また、決算発表や業績修正、株式分割といった企業固有のイベントが同じ時期に重なることも珍しくありません。良品計画やリクルートHDのように大きくマイナスだった銘柄は、MSCIの入替そのものよりも、その時期の個別企業の材料が株価に強く影響していた可能性があります。指数イベント単体の影響力は、こうした個別銘柄要因の中に埋もれてしまいやすいというのが、今回の検証から見えてきた実感です。

この検証データが参考になる人・ならない人

参考になる人:指数イベントの実際の値動きを事実として知りたい人

「MSCIの組入・除外が起きたとき、実際にはどのくらい株価が動いたのか」を事実ベースで知りたい方には、本記事のデータが参考になると思います。過去の値動きの傾向を把握しておくことは、指数イベントに対する過度な期待や不安を和らげる材料になります。

参考にならない人:組入・除外のニュースだけで売買判断の根拠を探している人

一方で、「MSCIに追加が決まったから買う」「除外が決まったから売る」といった、指数イベントのニュースだけを根拠にした売買判断を探している方には、本記事はその根拠を提供するものではありません。今回の検証結果は、そうした単純な売買ルールを裏付けるものではなく、むしろ注意を促す内容になっています。

この検証の限界(過信しないための注意点)

n=30はまだ統計的に小さいサンプル

今回検証した銘柄数は30件(追加15件・除外15件)です。統計的に十分な傾向を導き出すには、まだサンプル数が少ない水準です。今回、平均が小幅なプラスにとどまったこと自体は事実ですが、これが将来も同じ傾向を示し続けるかどうかは、この検証だけでは判断できません。

月次TOPIXでの簡易比較・適用日の数営業日ズレという誤差要因

超過リターンの計算には、同期間のTOPIX連動型ETF(1306)の月次の変動率を使用しており、日次データによる厳密な比較ではありません。また、「適用日」として扱った日は、実際のMSCI公式発表日から数営業日前後のズレを含む場合があります。こうした簡易的な比較手法による誤差が、個々の数値に一定の影響を与えている可能性がある点にご留意ください。

よくある質問(FAQ)

MSCI組入が決まったら買い時のサインですか?

今回の検証では、追加された15銘柄の平均超過リターンは+1.9%で、プラスになった銘柄は8件、マイナスになった銘柄は7件でした。個別銘柄の振れ幅に比べれば小さな数値であり、組入決定を単独の買いサインとみなす根拠は、本検証からは見出せませんでした。

除外されたら売った方がいいですか?

除外された15銘柄の平均超過リターンは+1.6%で、こちらもプラスだった銘柄が15件中8件(過半数)を占めており、「除外=売り時」と単純に判断できる結果にはなっていません。

発表日と適用日、株価が動きやすいのはどちらですか?

一般的には、正式な適用日より前の発表日(アナウンス時点)の方が株価に影響を与えやすいとされることがあります。ただし、本記事の検証は適用日から1ヶ月後までのデータのみを対象としており、発表日時点の値動きまでは検証していません。この点は今後の課題です。

まとめ:指数イベントは「材料の一つ」であり売買の決め手にはならない

過去30銘柄のMSCI ACWI組入・除外イベントを検証した結果、追加群の平均超過リターンは+1.9%、除外群は+1.6%と、どちらも個別銘柄の振れ幅に比べれば小幅にとどまりました。プラスとマイナスの銘柄数もどちらの群も8勝7敗とほぼ拮抗しており、「追加されたら上がる」「除外されたら下がる」という単純な傾向は、今回のデータからは確認できませんでした。個別銘柄の振れ幅自体は-14.5%〜+16.0%とかなり大きいものの、その方向性は思ったほど単純ではなく、セクターや市場全体の相場、個別企業の要因に左右されている面が大きいとみられます。指数イベントのニュースは、あくまで数ある材料の一つとして受け止め、それだけを根拠に売買判断をすることは避けたほうがよさそうです。

※本記事の検証は、2013年〜2026年に発生したMSCI ACWIの日本株組入・除外イベントのうち流動性の高い30銘柄(追加15・除外15)を対象とした簡易的な分析であり、サンプル数(n=30)は統計的に十分な規模とはいえません。超過リターンの算出には月次のTOPIX連動型ETF(1306)の変動率を使用しており、日次の厳密な比較ではありません。また「適用日」として扱った日はMSCI公式発表日から数営業日前後のズレを含む場合があります。本記事は過去の株価データの検証であり、将来の値動きを予測・保証するものではありません。個別銘柄の売買を推奨する意図もありません。投資は必ずご自身の判断と責任で行っていただくようお願いいたします。

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Yuzuriha
2015年投資開始。2020年10月からオルカン主軸の長期投資へシフトし毎月10万円積立中!大きな暴落でも売らずに続けた結果、オルカンは約2,800万到達(2026年8月時点)。暴落で不安になった時に「長期投資を続けよう!」と思えるサイトを目指します。