オルカン

eMAXIS Slim オールカントリー(オルカン)の手数料を徹底解説!隠れコストや実質コストまでわかる

「全世界株式に1本で投資できる」と人気の高い eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(通称“オルカン”)。投資信託をはじめて買う人、つみたて投資を考えている人なら、「手数料はどれくらい?」「本当に安いの?」と気になるところですよね。

本記事では、オルカンの信託報酬などのコスト構造をできるだけわかりやすく整理。公式情報や運用報告書ももとに、「表向きの手数料だけでなく、実際にかかるコスト」まで含めて解説します。

「なるべく無駄なコストを抑えて長期投資したい」――そんなあなたのために、必要なポイントを丁寧にまとめました。

オルカンとは?まずはファンドの基本を理解

オルカンは、世界中(日本を含む先進国および新興国)の株式に広く分散投資できるインデックス型の投資信託です。具体的には、 MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(MSCI ACWI、配当込み・円換算ベース)をベンチマークとしており、約50か国、約3,000銘柄に日本円で投資できる点が特徴です。

また、オルカンはつみたてNISAや一般口座、特定口座などさまざまな口座で購入でき、100円から1円単位での少額投資にも対応。これから資産形成を始めたい人にとって、とてもハードルが低いファンドです。

オルカンの主なコスト構造

投資信託では、購入時・保有時・売却時にそれぞれコスト(手数料)がかかります。オルカンの手数料構造は以下の通りです。

購入時手数料(買付手数料) 無料(ノーロード)
信託報酬(運用管理費用) 年率 約 0.05775%(税込、2025年時点)
換金時・解約時の手数料
(信託財産留保額など)
なし
その他費用(隠れコスト) 運用報告書で発生する売買委託手数料、管理費、諸経費など

 

信託報酬 0.05775% — 業界最低水準の低コスト

オルカンの最も注目されるコストは、この「信託報酬」です。2025年12月時点で、税込で 年率 0.05775% となっており、これは多くの全世界株式インデックスファンドの中でも「かなり低い水準」と言えます。

また、この信託報酬は純資産残高に応じてわずかに下がる仕組み(いわゆる“受益者還元型”)が採用されています。たとえば、純資産総額が一定ラインを超えると、報酬率がわずかに低下する構造です。

【信託報酬変遷】

2018年10月31日~ 0.142%
2019年8月9日~ 0.132%
2019年11月12日~ 0.1144%
2023年5月11日~ 0.1133%
2023年9月8日~ 0.05775%

 

購入・解約手数料が無料なのも嬉しいポイント

多くの投資信託では、買付時や解約時に手数料がかかることがありますが、オルカンはそれらがすべて無料(ノーロード、信託財産留保額なし)です。これにより、頻繁に売買するわけでなければ、コストの心配をほとんどする必要がありません。

“隠れコスト”にも注目:実質コストの考え方

しかし、注意したいのは「信託報酬だけでコストを見積もらないこと」。投資信託には、運用中に実際にかかるさまざまな費用があり、これらをすべて合計したものが 「実質コスト」 と呼ばれます。

オルカンにおける隠れコストの内訳と理論上の構造

オルカンの「隠れコストに含まれる可能性のある項目」と「どのようにコストがかかるか」を見ていきます。運用報告書や解説サイトでは、オルカンの隠れコストに以下のような費目があると説明されています。

売買委託手数料 ファンドが株式(国内株・海外株など)を売買する際にかかる証券会社への手数料
有価証券取引税などの
税・手数料
国内株の売買がある場合など、取引税がかかる場合がある
保管費用 外国株式を海外で保管する際のカストディ(保管機関)手数料
監査費用など“運用事務に
かかるコスト”
ファンドの監査、事務処理、信託業務の維持管理に関する費用
為替コスト(間接的に
コストに影響する場合)
海外資産(外国株式)が多いため、為替変動や通貨換算に伴うコストやリスク。ただし「隠れコスト」として明示されるかはファンドによる

要するに、インデックス運用であっても 「資産を実際に買ったり売ったり」「管理したり監査したり」するたびに、コストがかかる — それが隠れコストです。

オルカンの隠れコスト・実質コストはどれくらいか

では、実際に公表されている数値をもとに、オルカンの隠れコスト/実質コストがどのくらいかを見てみます。

隠れコストおよび実質コストの例

直近の運用報告書(第7期)によれば、オルカンの 実質コスト=年率 0.094% だった、という報告があります。

過去には “隠れコストの合計がおおよそ年率 0.053%” と見積もられた例もあります。

・売買委託手数料:0.006%
・有価証券取引税:0.015%
・その他費用(保管費用、監査費用など):0.032%

これらの数字を、「表に見えるコスト(信託報酬など)」だけでなく、実際に運用したときのコスト(実質コスト)まで含めると、オルカンのトータルコストはおおむね 年 0.09%〜0.11% 前後 と考えられます。

では、この「実質コスト」「隠れコスト」の数値はどこから来ているのか――根拠となる情報源を説明します。

隠れコスト(売買委託手数料、有価証券取引税、その他費用など)の明細は、各ファンドの 運用報告書 の「1万口あたりの費用明細」などに記載されることがあります。オルカンの場合も、こうした明細が開示されており、そこから実際にかかったコストを確認可能です。

ただしこの明細は「ある一定期間」のものであり、年率換算したり、現在の純資産額や売買頻度などを考慮して調整する必要があります。そこから “年率換算” したものが、先ほどの 0.094% や 0.11075% などの数字の根拠です。

つまり、実質コストは「過去の運用実績(運用報告書)」をもとに “結果としてかかったコスト” を算出するものであり、理論値ではなく「実際のコスト履歴」によって明らかになります。

また、昨今はファンドの純資産規模が大きくなっており、スケールメリットから売買手数料などのコストが相対的に下がる傾向もあり、運用報告期間ごとに実質コストは上下する点にも注意が必要です。

なぜコストが低いのか?その背景と仕組み

オルカンの低コストの背景には、いくつかの運用・販売形態の工夫があります。

  • マザーファンド方式:オルカンは複数のインデックスマザーファンドを通じて分散投資するため、運用効率やスケールメリットを活かしやすい。
  • 販売手数料なし&信託財産留保額なし:買付も解約もコストがかからず、無駄な費用が発生しにくい。
  • 純資産規模の拡大によるコスト低減(受益者還元型):多くの人が投資を続けることで、信託報酬率を引き下げる余地がある。

これらの仕組みによって、オルカンは長期投資におけるコストの無駄を抑え、「分散 × 低コスト × シンプル」による資産形成を実現しています。

手数料が与える運用への影響:なぜ低コストが重要か

投資信託では、コストが小さいほど手元に残るリターンが大きくなりやすく、長期投資ではその差が雪だるま式に大きくなります。特に、インデックス投資のように「市場全体にゆっくり賭ける」手法では、

  • 手数料が高い → リターンを食いつぶす
  • 手数料が低い → その分、資産が増える可能性が高まる

という構図があります。また、信託報酬だけで判断するのではなく、実質コスト(隠れコストを含めたもの)で比較することが重要です。オルカンは信託報酬だけでなく、実質コストでも比較的低水準にあるため、長期投資向きといえます。

「手数料が低い」以外にも知っておきたい注意点

ただし、コストの低さだけで安心して飛びつくのは早計です。オルカンのような全世界株式ファンドには、以下のような特徴・注意点もあります:

  • 為替リスクがある — 外国株式(外国通貨建)の資産が多いため、為替の変動が基準価額に影響します。オルカンは為替ヘッジを行わないので、円高になると資産が目減りする可能性があります。
  • 株式市場の値動きリスク — 世界経済の情勢、各国の景気、地政学リスクなどにより、元本割れの可能性があります。特に短期間で大きなリターンを狙うタイプではありません。
  • 「隠れコスト」は将来も同じとは限らない — 実質コストはあくまで過去の運用報告書にもとづく数値。将来的に売買回数や運用方針が変わると、コストが変わる可能性があります。

手数料の低さを活かすのに向いている人・向かない人

以下のような人には、オルカンは特に向いています:

  • 投資初心者で、まずは「なるべくリスクとコストを抑えて始めたい」人
  • 毎月少額で積み立て投資を始めたい人(100円からOK)
  • 将来にわたって長期で資産形成したい人(老後資金・教育費など)
  • 分散投資したいが、銘柄を選ぶ手間を省きたい人

逆に、以下のような人には注意が必要です:

  • 短期間で大きな利益を狙いたい人 — 全世界株式インデックスは、安定的な成長が見込める反面、急激な急騰は限定的。
  • 為替変動リスクをできるだけ避けたい人 — 為替ヘッジなしなので、為替リスクがあります。
  • コストが少しの違いでも気になる「超コスト敏感」な人 — 信託報酬だけでなく、実質コストまで見極める必要があります。

まとめ:コストの「見える化」で、賢く長期投資を

今回ご紹介したように、オルカンは非常に低い信託報酬に加えて、購入時・解約時のコストもかからず、総じてコストが低めに設定された優秀な全世界株式ファンドです。

しかし、重要なのは「見えるコスト(信託報酬)だけで判断せず」「実質コスト(隠れコストも含む)」を意識すること。そして、あなたの投資目的や期間、コスト許容度に応じて、オルカンが適しているかどうかを判断することです。