オルカンは世界経済の成長に丸ごと乗れる

日本で「オルカン」と呼ばれている投資信託の多くは、MSCI ACWI(All Country World Index)をベンチマークとし、先進国から新興国まで、世界中の株式市場に分散投資することを目的としています。一本のファンドで数千銘柄、数十カ国に投資できるという手軽さから、長期投資の王道として圧倒的な支持を集めています。

世界経済の変化に合わせ、オルカンを構成する「国」は変化しています。
成長する国があれば、相対的に存在感を失う国もあり、株式市場の規模、流動性、投資環境、規制、政治情勢――そうした要因をもとに、MSCIは定期的に指数の構成を見直し、「どの国をどの区分(先進国・新興国など)に含めるか」を判断しています。

つまり、オルカンは単に「世界に分散している商品」ではなく、
世界経済の重心が移動する様子を、指数という形で忠実に反映する仕組みなのです。個人が国単位で将来を予測し、投資判断を下すのは極めて困難です。しかし指数連動型のオルカンであれば、世界全体の評価に基づいて、構成国は静かに、しかし着実に入れ替わっていきます。

こうした「国の入れ替え」や「比率の変化」は、ニュースとして大きく取り上げられることは少ないものの、実はオルカンに投資している私たちにとって非常に重要な意味を持っています。

MSCI ACWIの国分類ルール解説

オルカンが連動する「MSCI ACWI(All Country World Index)」は、単に世界中の株式を集めた指数ではありません。MSCIは明確なルールに基づき、どの国を、どの区分で、どの比率で組み入れるかを厳密に判断しています。

まず大きな枠組みとして、MSCI ACWIは以下の2つで構成されています。

先進国(Developed Markets)
新興国(Emerging Markets)

この区分は、国の経済成長率だけで決まるわけではありません。MSCIが重視する主な判断基準は次の3点です。

・経済発展の水準
一人当たりGNIなどを基準に、一定水準を継続的に満たしているか。

・株式市場の規模と流動性
時価総額、売買代金、上場企業数などが十分かどうか。

・市場へのアクセスのしやすさ
外国人投資家に対する投資規制、資本移動の自由度、決済・清算制度の整備状況など。

これらを総合的に評価し、MSCIは年1回以上、国の分類や構成比率を見直します。
このプロセスは「政治的判断」ではなく、「投資家目線」で行われています。

MSCI ACWI採用国|47ヵ国

・先進国:23ヵ国
・新興国:24ヵ国

2020年3月:アルゼンチン、サウジアラビア追加。新興国は24→26ヵ国に増加。
2021年3月:クウェート追加。新興国は26→27ヵ国に増加。
2022年3月:ロシア、アルゼンチン、パキスタン除外。新興国は27→24ヵ国に減少。

引用元:eMAXIS Slim オールカントリー目論見書

 

先進国割合

米国株の割合は増加傾向。日本株の割合は減少傾向

割合 構成 米国 日本
2025年3月 89.7% 23ヵ国 64.5% 4.9%
2024年9月 89.4% 23ヵ国 64.2% 5.0%
2024年3月 90.0% 23ヵ国 63.8% 5.5%
2023年9月 89.3% 23ヵ国 62.3% 5.5%
2023年3月 89.1% 23ヵ国 60.6% 5.5%
2022年9月 88.9% 23ヵ国 62.0% 5.4%
2022年3月 88.9% 23ヵ国 61.4% 5.4%
2021年9月 88.0% 23ヵ国 59.6% 6.2%
2021年3月 87.0% 23ヵ国 57.8% 6.5%
2020年3月 87.0% 23ヵ国 56.6% 7.5%
2019年3月 88.3% 23ヵ国 55.0% 7.2%

 

新興国割合

中国株の割合は減少傾向。インド株の割合は増加傾向

割合 構成 中国 台湾 インド
2025年3月 10.3% 24ヵ国 3.2% 1.7% 1.9%
2024年9月 10.6% 24ヵ国 2.9% 1.9% 2.1%
2024年3月 10.0% 24ヵ国 2.5% 1.8% 1.8%
2023年9月 10.7% 24ヵ国 3.2% 1.6% 1.7%
2023年3月 10.9% 24ヵ国 3.6% 1.7% 1.4%
2022年9月 11.1% 24ヵ国 3.5% 1.5% 1.7%
2022年3月 11.1% 24ヵ国 3.3% 1.8% 1.4%
2021年9月 12.0% 27ヵ国 4.1% 1.8%
2021年3月 13.0% 27ヵ国 4.9% 1.8%
2020年3月 12.0% 26ヵ国 4.9% 1.5%
2019年3月 11.7% 24ヵ国 3.9% 1.3%