「日本には億り人がたくさんいる」「投資をすれば誰でも億り人になれる」──SNSやYouTube、ブログなどで、こうした言葉を目にする機会は増えました。
一方で、「本当にそんなにいるの?」「自分もなれる現実的な可能性はあるの?」と疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、日本に実際にどれくらいの「億り人」がいるのかを、国税庁などの公的データをもとに、やさしく丁寧に解説します。
あわせて、「億り人」に対して抱きがちな幻想と、冷静に知っておくべき現実についても整理します。

投資や資産形成を始めたばかりの方、これからお金について真剣に考えたい方にとって、現実的な判断材料になる内容を目指しています。

「億り人」とは何を指す言葉なのか?

まず前提として、「億り人」という言葉には法律上・統計上の明確な定義はありません
一般的には、次のような意味で使われることが多いです。

  • 金融資産(預貯金・株式・投資信託など)が1億円以上ある人
  • 年間所得が1億円以上ある人

ただし、この2つはまったく別物です。
「資産1億円」と「年収1億円」では、人数も生活実態も大きく異なります。
本記事では、主に「所得」と「資産」の両面から、「億り人」の実態を見ていきます。

データで見る「年収1億円以上」の日本人は何人?

まずは、国税庁が毎年公表している「申告所得税標本調査」のデータを見てみましょう。
これは、確定申告をした人の所得階級別人数を集計した、信頼性の高い公式統計です。

国税庁データが示す「所得1億円超」の人数

国税庁の「所得階級別人員」によると、直近のデータは以下となります。

  • 所得1,000万円以上:8.0%
  • 所得2,000万円以上:2.5%
  • 所得5,000万円以上:0.5%
  • 1億円以上    :0.2%

引用元|国税庁 申告所得税

所得税申告者数が約2,300万人前後の理由

理由は一言でいうと「日本の大多数の人は確定申告をしない」からです。

✅ 「所得税申告者=働いている人」ではない

国税庁の統計でいう「申告所得税の申告者 約2,300万人」とは、自分で確定申告をした人の人数を指します

所得税申告者に含まれる人

  • 個人事業主・フリーランス
  • 確定申告が必要な高所得会社員
  • 副業が一定額を超えた会社員
  • 不動産所得がある人
  • 株・暗号資産などで申告が必要な人
  • 医療費控除・住宅ローン控除などで還付申告した人

 

✅日本では「会社員の大半は申告不要」

会社員・公務員の圧倒的多数は 年末調整 で完結しています。

  • 所得計算
  • 控除適用
  • 税額計算
  • 納税

上記を会社が代行しており 本人は確定申告をしません。
働いているのに、申告者数には含まれない人が大勢いるのです。

 

✅日本の人口構成
おおよその日本の人口構造は以下の通りです。

  • 総人口         :約1.24億人
  • 15歳未満        :約1,400万人
  • 高齢者        :約3,600万人
  • 専業主婦・学生等    :数百万人
  • 会社員(年末調整のみ) :約5,000万人
  • 確定申告が必要な人   :約2,300万人

多くの高齢者の収入は年金のみ。公的年金等控除が大きく源泉徴収で完結し確定申告不要の方が多数です。

「年収1億円」が少ない理由

年収1億円以上の人が少ないのは、決して不思議なことではありません。
理由として、次のような点が挙げられます。

  • 給与所得だけで1億円に到達する人は、上場企業の経営層などごく一部
  • 事業所得・不動産所得・金融所得が必要になるケースが多い
  • 税負担も非常に大きく、継続が難しい

SNSで語られる「年収1億円」は目立ちますが、現実には超少数派であることが分かります。

「資産1億円以上」の人は何人いるのか?

次に、多くの人がイメージする「億り人」、つまり金融資産1億円以上の人の人数を見てみましょう。

この点で参考になるのが、野村総合研究所(NRI)の金融資産ピラミッドです。

野村総研の金融資産ピラミッドとは

野村総研は、日本の世帯を金融資産額ごとに分類し、定期的に調査結果を公表しています。
最新の公表データでは、次のような分類が使われています。

  • 超富裕層:5億円以上
  • 富裕層:1億円以上5億円未満
  • 準富裕層:5,000万円以上1億円未満
  • アッパーマス層:3,000万円以上5,000万円未満
  • マス層:3,000万円未満

資産1億円以上の世帯数

この調査によると、日本の

  • 富裕層(1億円以上5億円未満):約140万世帯
  • 超富裕層(5億円以上):約9万世帯

を合計すると、

資産1億円以上の世帯は約150万世帯

存在するとされています。
個人ベースではなく「世帯」なので注意が必要ですが、年収1億円の人数と比べると、はるかに多いことが分かります。

なぜ「億り人が多い」と錯覚してしまうのか?

ここまでのデータを見ると、「思ったより少ない」と感じた方も多いのではないでしょうか。
それでも、多くの人が「億り人はたくさんいる」と感じてしまうのには、理由があります。

SNS・メディアによる情報の偏り

SNSやブログ、YouTubeでは、

  • 成功体験が拡散されやすい
  • 「再現性が低い事例」ほど注目される
  • 失敗例はあまり語られない

という特徴があります。
その結果、実際よりも「億り人が身近にいる」ように見えてしまうのです。

「フロー」と「ストック」の混同

もう一つ大きな原因が、所得(フロー)と資産(ストック)を混同してしまうことです。

  • 一時的に資産が1億円を超えた
  • 評価額ベースで達成した

こうしたケースも含めて語られるため、「億り人」という言葉が過度に広がってしまいます。

「億り人」は特別な才能がないとなれないのか?

ここで多くの方が気になるのが、

「自分には無理なのでは?」

という点でしょう。
結論から言えば、再現性は低いが、不可能ではないというのが現実的な答えです。

資産1億円に到達した人の共通点

データや実例から見えてくる共通点には、次のようなものがあります。

  • 長期間(20〜30年)の資産形成を行っている
  • 収入の一部を継続的に投資している
  • 複利を味方につけている
  • 生活水準を急激に上げていない

一発逆転ではなく、地味で堅実な行動の積み重ねが多いのが特徴です。

現実的な目標設定が資産形成を続けるコツ

「億り人」を目標にすると、どうしてもハードルが高く感じてしまいます。
そこでおすすめなのが、段階的な目標設定です。

  • まずは金融資産1,000万円
  • 次に3,000万円(アッパーマス層)
  • 5,000万円(準富裕層)

このように区切ることで、現実感を持って資産形成を続けやすくなります。

まとめ|「億り人」の現実を知ることが第一歩

この記事では、「日本に億り人は何人いるのか?」という疑問について、公式データをもとに解説しました。

  • 年収1億円以上の人は約2万人前後
  • 資産1億円以上の世帯は約150万世帯
  • SNSの影響で実態より多く見えがち
  • 多くの億り人は長期・堅実な資産形成の結果

「億り人」は決して身近な存在ではありません。
しかし、現実を正しく知ることが、無理のない資産形成を続けるための第一歩です。

派手な成功談に振り回されず、あなた自身のペースで、お金と向き合っていきましょう。